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 東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県)が昨年10月、13年7カ月ぶりに再稼働した。東日本での再稼働は原発事故後初で、政府は原発の「最大限活用」をめざしている。一時は「東日本壊滅」の危機に陥ったとされる事故からまもなく14年、見過ごされている点はないのか。航空機事故などの調査報道を長年続け、政府事故調で委員長代理を務めたノンフィクション作家の柳田邦男さん(88)に聞いた。

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インタビューに応じる柳田邦男さん=2024年12月18日、東京都杉並区、三浦英之撮影

 ――著作「マッハの恐怖」や「空白の天気図」などで、事故や災害の原因を分析する大切さを訴えてきました。

 若い頃にNHKの記者として、旅客機事故などの原因分析に取り組みました。最初に手がけた1966年の連続航空機事故の頃はまだ、企業や役所の問題を指摘することはあっても、背景にある組織システムなどを要因分析し、本当の原因はどこにあったのか掘り起こすような報道は少なかった。

 単なるヒューマンエラーで終わらせるのではなく、フロー(流れ)の分析をする。なぜ現場はミスをしたのか。なぜミスをしても、事故にはならない対策が採られなかったのか。「なぜ、なぜ?」と掘り下げ、事故の原因や背景を明確にし、再び事故を起こさないための教訓を導き出そうとしてきました。

 ――政府事故調での検証は十分だったのでしょうか?

 非常に不十分だったと思います。調査の実務を担う事務局は数十人で、報告までの期間は1年余に限られました。個人の責任追及はしない方針としつつ、事務局は警察や検察官僚が中心で、どうしても捜査的な、失敗の責任追及に問題意識が働いていました。

 私が行いたかったのは、事故…

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